孫子の兵法(0)　孫子の時代　

孫子の兵法は、古代中国の軍事戦略書で、孫武によって書かれたとされています。

13篇の短い読み物

『孫子の兵法』は比較的短い書物で、全13章から成り立っています。各章は簡潔で要点がまとめられており、全体の長さは約6,000字程度です。現代の翻訳や解説書では、注釈や解説が加えられているため、ページ数が増えることがありますが、原典自体はそれほど長くありません。

孫武（孫子）の生い立ち

「孫子」の「子」は、尊称として使われることが多いです。古代中国では、尊敬される人物や学者、思想家に対して「子」という称号を付ける習慣がありました。例えば、孔子（孔丘）、孟子（孟軻）などがその例です。
「孫子」の場合も同様で、孫武に対する尊称として「子」が付けられています。つまり、「孫子」は「孫武先生」といった意味合いになります。

孫武（そんぶ）は、紀元前535年頃に中国の斉国で生まれたとされています。彼は若い頃から兵書や古典を学び、軍事思想家としての基礎を築きました。紀元前517年頃、一族内の内紛を避けるため、家族と共に南方の呉国へ移住しました。
呉国では、宰相の伍子胥（ごししょ）に推挙され、呉王闔閭（こうりょ）に仕えることになります。孫武は呉王に『孫子』の兵法を説き、実践することでその才能を認められました。
その後、孫武は将軍として活躍し、楚国を破るなど多くの戦功を挙げました。しかし、晩年については記録が少なく、詳細は不明です。

中国史

年代	時代名	人物（エピソード）
紀元前2070年 – 紀元前1600年	夏	禹（治水事業）、桀（暴君）
紀元前1600年 – 紀元前1046年	商	湯王（商の創始者）、紂王（暴君）
紀元前1046年 – 紀元前256年	周	武王（周の創始者）、周公旦（賢臣）
紀元前770年 – 紀元前221年	春秋戦国時代	孫武（兵法）、孔子（思想家）、秦の始皇帝（中華統一）
紀元前221年 – 紀元前207年	秦	始皇帝（中華統一）、胡亥（暴君）
紀元前206年 – 西暦220年	漢	劉邦（高祖）、武帝（拡大政策）
220年 – 280年	三国時代	曹操（魏）、劉備（蜀）、孫権（呉）

孫武の生きた春秋戦国時代は、周王朝の権威が衰え、多くの諸侯が独立して争う時代でした。各国が領土拡大や覇権を目指して戦争を繰り返し、政治的・軍事的な混乱が続いていました。

王の寵姫を処刑

孫武の有名なエピソードの一つに、呉王闔閭（こうりょ）の宮廷での出来事があります。孫武は呉王に兵法の実践を示すため、宮廷の女性たちを兵士として訓練することを提案しました。呉王はこれを了承し、特に寵愛していた二人の妃を含む宮廷の女性たちを孫武に預けました。

孫武はまず、女性たちに基本的な軍事訓練を施し、命令に従うことの重要性を説きました。しかし、女性たちは笑いながら真剣に取り組もうとしませんでした。そこで孫武は、命令に従わない者には厳しい罰があることを示すため、呉王の寵姫二人を処刑することを決断しました。

この行動により、残りの女性たちは孫武の命令に従うようになり、訓練は成功しました。このエピソードは、軍の規律と命令の重要性を強調するものとして広く知られています。

呉王闔閭（こうりょ）

呉王闔閭（こうりょ）は、中国春秋時代の呉の第6代王で、本名は姫光（きこうです。彼は孫武や伍子胥といった有能な家臣の助けを得て、呉を一大強国へと成長させました。

闔閭は、楚との戦いで大きな成果を上げ、特に紀元前506年の柏挙の戦いでは楚の首都郢を陥落させることに成功しました。しかし、晩年には越王勾践との戦いで敗れ、最終的にはその戦いで負った傷が原因で亡くなりました。彼は死の間際に、息子の夫差に越王勾践への復讐を誓わせました。

闔閭は春秋五覇の一人に数えられることもあり、その治世は呉の歴史において重要な時期とされています。

孫武と孔子

孫武と孔子は、同じ時代に生きた人物です。孫武は紀元前535年頃に生まれ、孔子は紀元前551年に生まれました。

孔子は儒教の創始者であり、倫理や政治についての教えを広めました。彼の思想は、家族や社会の秩序を重んじるもので、中国の文化や社会に深く根付いています。孔子の教えは、教育や道徳の基盤として、今でも多くの人々に影響を与えています。

ビジネスマンに人気

孫武はその知識と戦術で多くの戦いに勝利しました。孫武の教えは、現在でも世界中の軍事やビジネスの分野で参考にされています。

一方、孔子は儒教の創始者であり、倫理や政治についての教えを広めました。彼の思想は、家族や社会の秩序を重んじるもので、中国の文化や社会に深く根付いています。孔子の教えは、教育や道徳の基盤として、今でも多くの人々に影響を与えています。