『同志少女よ、敵を撃て』– 小説の世界から現代の戦争へ

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『同志少女よ、敵を撃て』は、逢坂冬馬による第二次世界大戦を舞台にした小説であり、2022年の本屋大賞を受賞した話題作です。本作は、ドイツ軍に母を殺された少女セラフィマが、ソ連赤軍の女性狙撃兵として成長していく姿を描いています。戦争の残酷さと人間の強さを鮮烈に描きながら、歴史的事実とも密接に結びついている作品です。本記事では、小説の内容や登場人物、史実との関係、メディア展開の情報、そして現代のウクライナ戦争へのつながりを探っていきます。

小説のあらすじ

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同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬

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1942年、モスクワ近郊の農村で母と暮らしていた16歳の少女セラフィマは、ドイツ軍の襲撃により母を殺され、村が壊滅します。自らも命を落としかけたところを、赤軍の女性兵士イリーナに救われます。「戦うか、死ぬか」という問いを突きつけられた彼女は、復讐を誓い狙撃兵の道を選びます。

狙撃兵訓練学校で過酷な訓練を受けたセラフィマは、同じく家族を奪われた仲間たちと共に、やがてスターリングラードの最前線へと赴きます。戦場で彼女が見たのは、憎むべき敵だけではなく、同じように戦争の犠牲者である人間の姿でした。復讐だけを目的としていた彼女は、次第に「真の敵とは何か?」を考え始めるのです。

登場人物と彼らの生い立ち

セラフィマ

  • 民族・出身地:ロシア系 or ウクライナ系(モスクワ近郊の農村)
  • 生い立ち:幼い頃から母と共に狩猟をしていた。ドイツ軍の侵攻で母を殺され、復讐のために狙撃兵を志す。
  • 思い:ロシア民族の誇りを持ちつつも、戦争の中で失われる人間性に疑問を持ち始める。

イリーナ

  • 民族・出身地:ロシア系 or ベラルーシ系
  • 生い立ち:赤軍のベテラン狙撃兵であり、戦場の現実を知る人物。過去に辛い経験を持つ。
  • 思い:ロシア帝国の正統な後継者としてのソ連を信じ、祖国のために戦うことに誇りを持つ。

シャルロッタ

  • 民族・出身地:ロシア貴族の出身(ドイツ系 or バルト系の血統)
  • 生い立ち:貴族階級に生まれたが、革命後に没落し、モスクワ射撃大会の優勝者として頭角を現した。
  • 思い:自らの貴族出身を指摘されるのを嫌い、個人の実力で戦うことにこだわる。故郷や家族の誇りを捨てられず、ソ連の体制の中でアイデンティティの葛藤を抱く。

ヤーナ

  • 民族・出身地:ロシア系 or ウクライナ系
  • 生い立ち:戦争前は普通の家庭に育つが、家族を失い、戦場で生きる道を選ぶ。
  • 思い:仲間たちを支える母親的存在であり、戦争がもたらす悲劇を身をもって知る人物。心優しく、他者を気遣うが、戦場の厳しさに耐える強さも持つ。

アヤ

  • 民族・出身地:カザフ系(中央アジア)
  • 生い立ち:遊牧民の家系で育ち、幼い頃から狩猟の技術を学ぶ。ソ連の中で周辺民族として扱われ、限られた選択肢の中で生きてきた。
  • 思い:カザフ民族はソ連の中で二級市民として扱われていたため、戦争を戦うことに対して愛国心よりも生き抜くための手段と割り切る姿勢を持つ。赤軍への忠誠よりも個人の生存が最優先。

オリガ

  • 民族・出身地:ウクライナ系(コサックの血を引く)
  • 生い立ち:戦士の血を引く家系の出身で、陽気で快活な性格を持つ。家族が伝統的に騎馬文化を誇りにしており、ソ連の体制の中で民族としてのアイデンティティを強く持っている。
  • 思い:コサックの誇りを持ち、ロシア帝国やソ連の支配に反発しながらも、ウクライナ独立の実現は現実的でないと考える。戦場での自由こそが自分の生きる道と信じている。

史実との関連

本作は、第二次世界大戦中のソ連赤軍女性狙撃兵の実話を元にしており、実際にソ連には多くの女性狙撃兵が存在しました。その中でも特に有名なのが、リュドミラ・パヴリチェンコ(史上最多の309人を狙撃した女性狙撃手)です。

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『ロシアン・スナイパー』(2015)は、第二次世界大戦で活躍した女性狙撃兵リュドミラ・パヴリチェンコの実話を描く戦争映画。彼女は309人を狙撃し、セヴァストポリの戦いで英雄となるが、戦争の過酷さと個人の葛藤に直面する。戦場の迫力ある描写と、戦争に翻弄される人間ドラマが見どころ。

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映画『ロシアン・スナイパー』ぜひ観てほしい。両者にはリンクする部分が多く、二つを通してこそ物語が完成するといっても過言ではない、非常におすすめの作品です。

メディア展開

『同志少女よ、敵を撃て』は、2024年に早川書房の新コミックレーベル「ハヤコミ」より、鎌谷悠希の作画、速水螺旋人の監修でコミカライズされました。2024年7月23日には第1話前半が公開され、順次エピソードが配信されています。原作小説の映像化を期待する声も多いですが、2025年2月現在、映画化やアニメ化の公式発表はされていません。

『同志少女よ、敵を撃て』と現代のウクライナ戦争

本作が描く独ソ戦の歴史は、現在のウクライナ戦争とも共鳴する部分があります。ソ連時代からのロシアの影響とウクライナの独立への意識は、戦争のたびに変化してきました。

ウクライナとロシアの歴史的関係

ウクライナは長らくロシア帝国やソ連の支配下に置かれていました。ソ連時代にはウクライナで飢饉(ホロドモール)や抑圧が行われ、独立の機運が何度も押しつぶされました。第二次世界大戦中には、一部のウクライナ人がナチス・ドイツ側についたこともあり、戦後はソ連の一部として組み込まれました。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻

2022年2月、ロシアはウクライナに対して軍事侵攻を開始しました。この戦争は、ソ連崩壊後のウクライナ独立を巡る長年の対立の延長線上にあります。ウクライナは独立した国家として西側諸国と関係を強める一方、ロシアは歴史的影響を保持しようとし、武力侵攻へと発展しました。

まとめ

『同志少女よ、敵を撃て』は、単なる戦争小説ではなく、戦争が個人に与える影響や、歴史が繰り返される悲劇を問いかける作品です。登場人物の背景や史実を知ることで、物語の奥深さがより理解できます。そして、現代のウクライナ戦争にもつながる歴史の流れを見つめることで、戦争の本質について考えさせられるのです。

戦争の犠牲者はいつの時代も同じ。

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